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読了:今尾恵介責任編集 地図と鉄道, 今尾恵介 [読書日記]

* 今尾恵介責任編集 地図と鉄道, 今尾恵介, 洋泉社, 9784800312136

地図マニア&鉄道マニアに贈るウンチク本、でしょうか。
今尾氏の著作は3冊目の読了で、これまでのバラつき感は気になるものの、なかなか美しい表紙絵にも惹かれて購入。

帯紙いわく「鉄道の歴史、路線の謎、廃線の理由・・・すべての答えは地図にあり」ということだ。内容はおおきく3部に分かれ、地形図から読み取れる特徴的な地形と鉄道敷設との関係を解説する第1部(前著などからも、このあたり今尾氏の本領発揮な領域と思われる)、横浜駅移転に代表される鉄道路線の変遷史を解く第2部、そして廃線跡や未成線をたどる第3部とからなる。いずれも取り上げられる題材はたいへんにマニアック(褒めてます)。個人的には天井川にまつわる地形図の読み解き方の記述は目からうろこで楽しめたところ。

第2部以降は、地形図はあくまで歴史の記録者という立場。こうなると地図マニアではついていけず、鉄道マニアの独壇場という様相となる。個人的にはたいへん面白く読ませてもらったのだが、(当たり前だが)なんというか読み手を選ぶ本だなという印象が強くなる。本文記述を理解しながら読み進めるのに必要となる背景知識、特に日本の鉄道史に関するそれが幅広く必要とされている感じで、このあたりがマニア向けウンチク本なのではという話だ。

前述のように個人的には最後まで楽しく読めたし、大量に収録されている図表なども考え合わせると、これで1500円ならリーズナブルだよなというところだ。ただしかなり読者を選びます。その意味で、ゆるいイラスト地図を前面に押し出した表紙カバー絵は、かなりミスリードなんじゃないかとも。それと、タイトルの「・・・責任編集」という文言はずいぶんと大上段に構えた感じで、ややラフにまとめた感じがそこここにする本文構成ともいま一つマッチしていないような印象を受けた。対談集も著作宣伝ぽくて何だかなという気がした。

今尾恵介責任編集 地図と鉄道


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読了:ほうかご探偵隊, 倉知淳 [読書日記]

* ほうかご探偵隊, 倉知淳, 東京創元社, 9784488421090

倉知淳によるジュヴナイルなんだけど本格推理というミステリ小説である。
この作者のミステリはちょっと人を食ったような話が多いのだが、それをジュヴナイルで?という点で興味津々。

舞台は小学校の5年生の1クラス、あくまで少年少女が主人公。読者層を考えれば当然の設定である。
クラスの内外でこのところ起きている不思議な事件の謎を解こうと、彼ら小学生なりの活動を開始する面々。推理小説好きのメンバー・龍之介くんが次々に立てる仮説をみんなで検証しては潰していく過程がちゃんと書かれていて感心。一方で先生や大人が言っていることは正しいはず的な小学生ならではの前提があちこちにあるのだが、これはこれでジュヴナイルとしては正しい道なのであろう。
最初は簡単に思えていた事件は、調査をしていくにしたがって案外いろいろな事実が絡んでいることがわかってきて、そのうち新たな証言も飛び出してくるなどして混迷の様相を呈してくるのだが・・・と、ここで解決編がはじまる。(えっ、ここからあとの全部のページが解決編???)

というわけで、巧者・倉知淳の手腕はここからが見どころ。ネタバレは書きませんが、この作品でミステリに触れた少年少女は幸せなんじゃないかなぁ、と。

それから、個人的には龍之介くんの将来が楽しみですね。「リスみたいにくりんとした目」ですしね。猫もリスもおなじような目かなぁ、なんて(笑)。

ほうかご探偵隊 (創元推理文庫)


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読了:湖底のまつり, 泡坂妻夫 [読書日記]

* 湖底のまつり, 泡坂妻夫, 東京創元社, 9784488402136

巨匠・泡坂の長編ミステリー作品である。1970年代の発表。

泡坂作品は「亜愛一郎」シリーズも含めて8作目の読了になるのだが、読み終わって・・・いやーこれは面白い。
綾辻行人も解説へ書いているが、この作品は、あらすじとか解説とか口コミとか、一切見ないようにして読了すべきな気がする。それもあって内容に触れるのがかなり憚られる状況。

全体を4章に分け、章ごとに視点というか語り手が変わる。それ自体は特異な手法というわけではないと思うが、章ごとに読み進めていくにつれミステリーの読者としては何だか頭がクラクラしてくる。ものがたりの進む方向に予測が付きそうでつかない、謎がふわふわと手の中でつかみきれない、ページを繰る手が自然と早くなっていくのを止められない、そんな作品だ。

書かれた時代背景もあると思うが、本作には混みあった電車の中で読むのは気恥ずかしい(もしくは子供が読むのはちょっとどうかと思える)描写がある。泡坂作品ってこういうノリだっけ?とやや困惑しながら読み進めたわけですが、いやいやしかし。

ぜひ楽しみましょう。

湖底のまつり (創元推理文庫)


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読了:反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書 (The Gospel of the Flying Spaghetti Monster), ボビー・ヘンダーソン [読書日記]

* 反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書 (The Gospel of the Flying Spaghetti Monster), ボビー・ヘンダーソン, 片岡夏実, 築地書館, 9784806713401

少し前、2000年代くらいに米国で問題になったインテリジェント・デザイン (ID) 問題をパロッた本。似非科学への痛烈な批判本であるという論評もあり、今回たまたま機会があって手に取った。2006年の訳出。

しかし、これは少々読み進むのが大変、というのが率直な感想。IDが物議をかもし、科学教育界をまきこんでの社会問題になったことは承知しているが、実は元のIDの言質について細かいところをあまり把握しきれておらず、元ネタを知らないパロディを読んでいる状態で、個人的にはしまったなというところ。さらにまずいことに、キリスト教各派の教義やらキーワードやらもあまり把握しておらず、これまた同じ状況。

つまり、ユーモアを解するには知性と教養が必要、というわけだ。訳者もあとがきに書いているが、無宗教でならしている日本人には本書の本当のところの狙いは押さえきれないところなのかもしれない。もちろん読んだら読んだなりのことはあるのは確かで、上に書いた把握できていない部分も多かれ少なかれ知ることはできた、と思ってはいます。

# ところでミートボール入りのスパゲッティって、米国でそんなにメジャーだったかしらん。ルパン三世の映画だったかに小道具として出てくるというのは知っていますが・・・。

反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書


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読了:風ヶ丘五十円玉祭りの謎, 青崎有吾 [読書日記]

* 風ヶ丘五十円玉祭りの謎, 青崎有吾, 9784488443139

「裏染天馬」シリーズの第3弾という連作短編集である。青崎作品は初読。
この作品より以前に登場人物などに同じ設定を用いた長編2作が出ているのだが、実は未読である。この特異なタイトル(もちろん、「五十円玉二十枚の謎」を意識してのものだろう)が平積みになっていたのに惹かれて購入。

本シリーズの舞台は、神奈川県立の風ヶ丘高校(名前とか近隣の駅名とかから推測すると、某旧学区トップ高のあの高校ですね)とその周辺。登場人物もおのずと高校生が主体であり、探偵役の男子高校生:裏染天馬くんがかなり特異な印象、対比してヒロイン(?)の袴田柚乃がかなりいい味をだしていて、周囲の人物像も含めてなかなか面白い。というか、読んでいてゲラゲラ笑ってしまった。

登場人物たちの動きと会話だけでも十分楽しめる面白さなのだが(ここを強調しすぎると軽い小説と思われてしまうリスクあり?)、この著者は鮎川哲也賞をとっただけのことはあって、なかなかの書き手である。会話文に頼りすぎることなく、読みやすい流れるような文章構成、それでいて論理展開や状況説明は漏れなくしっかりと記述される。個人的には有栖川有栖のそれに近い印象を持った。

いやいや、これはなかなか楽しませてもらえました。長編未読の読者への配慮もされていたりして、気が利いている。「五十円玉・・・」は(もともと競作に参戦したわけではないので当たり前ですが)ちょっと結末にありゃりゃと思いましたが、そういう前提抜きであれば十分なクオリティ。長編も手に取ってみたくなってきました。

風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)


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読了:江神二郎の洞察, 有栖川有栖 [読書日記]

* 江神二郎の洞察, 有栖川有栖, 東京創元社, 9784488414078

有栖川有栖の「学生アリス」シリーズの短編集である。もう一方のミステリ作家のアリスシリーズは短編が多数発表されているが、学生アリスシリーズでは初短編集。収録作はアンソロジーなどで出版されているものも多い由だが、一編しか読んだことがなかったようだ。
(ちなみに、五十円玉・・・のあの短編が載ってないなと思ったら、文庫版あとがきで著者本人が述懐していた。)

このシリーズは既に長編が4編発表されており、収録されている短編は基本的にそれら長編の事件の合間にメンバーが遭遇した話ということになっている。なので、シリーズを読み通している読者は、ところどころであぁとかおぉとか思うという仕掛け。ちょっと面白い。それから、京都の地理や習慣にもう少し詳しければさらに楽しめるのだろうなぁと思えることもしばしば。このあたりは関東人の辛さか(google mapを眺めるしかない)。

また、これはほかの長編もそうだが、描かれている時代が昭和末期から平成へというころなので、現在の生活必需品であるアレが存在していない。話の流れがいろいろともどかしかったり、トリック自体がそれで成立したりしなかったりするところもあるわけだが、それはそういう時代なのだと思って読みましょうということである。前にどこかでも書いたが、物心ついたころからソレがある若い読者はこの世界に入り込むのが難しいとか思うかもしれず、それはそれで気の毒という気もしてしまう。そんなこと言ってもどうにもならないのですが。

収録作品:瑠璃荘事件、ハードロック・ラバーズ・オンリー、やけた線路の上の死体、桜川のオフィーリア、四分間では短すぎる、開かずの間の怪、二十世紀的誘拐、除夜を歩く、蕩尽に関する一考察


江神二郎の洞察 (創元推理文庫)


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読了:アメリカの食卓, 本間千枝子 [読書日記]

* アメリカの食卓, 本間千枝子, 文藝春秋, 4167364018

米国人の生活&文化の歴史についての論評というかエッセー。
いわゆる戦後の時代に米国留学~滞在を7年ほどした経験や、その後の研究をもとに米国ないしその一部地域における食と生活の文化について、歴史を紐解きながら解説を試みている、のだと思う。1982年に単行本刊行なので、メモなどをあるていど暖めたか書き溜めたかしたのを一冊にまとめたのがそのころ、という様子。

取り上げられる題材は極めて多岐にわたるが、著者の筆が走るのはNYC近郊をはじめとするアングロアメリカのあたりと、ミシシッピ沿いの旧フランス領の地域のあたりのよう。逆に西海岸の話は薄めで、カリフォルニアの片隅でチャイニーズマーケットに入り浸って食材を買いだしていた自分(1990年代の話です)とは温度差があるようだ。しかしこれも米国東西のカラーなのであろう。

見返しの著者紹介には「主婦」とあるが、なかなかどうして読ませる文章構成で、それなりの年月を経ていても読みやすいなと感じる。そして、そもそも著者は(かくいう自分も)食いしん坊なのであろう、話が食べ物のくだりになると俄然生き生きと面白くなってくる。まぁ、前振りとしてその地域やら都市の歴史的背景が記されているのはそれはそれで教養として楽しくて、例えば、近代化に突き進む時代の米国都市における衛生事情とブタにまつわる話など、先日読んだ『世界をつくった6つの革命の物語』(こちらは科学史的な切り口)にも取り上げられていて、こう繋がってくるのかと嘆息したり。

ひさしぶりにローストビーフを焼いてみたくなりましたね。

アメリカの食卓 (文春文庫 (364‐1))


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読了:青白く輝く月を見たか? (Did the Moon Shed a Pale Light?), 森博嗣 [読書日記]

* 青白く輝く月を見たか? (Did the Moon Shed a Pale Light?), 森博嗣, 講談社, 9784062940757

森博嗣のWシリーズ第6弾である。舞台はいうなれば、北極編、とでもいおうか。

前作(南アフリカ編)までは「ウォーカロン」の解釈が物語のかなりのウェイトを占めていたのだが、ずいぶんと雰囲気がちがう。本書の主題はA.I.、いまをときめく(笑)人工知能である。もちろん森ワールドでは、単に人工知能がすごいみたいな話はもう出尽くしているので、そういう展開ではない。ややネタバレになるのかもだが、これまで「人間」と「ロボット または 人工物」の差異とは何か、と問われていたあたりをさらに一歩踏み出した感じ。バイオテクノロジィ的なガジェットはほとんど出てこないのが、(自分がウェット系の技術分野には相対的に疎いからなのかもしれないが)臨場感を醸し出すような気もするし、しかし逆にA.I.の描かれ方が多少SF観点ではステレオタイプっぽいような気もして、ちょっとだけぶっとび感が緩んだような気もしてしまう。期待しているベクトルが間違っているのかもしれないが。

そういえば前作もだったが、いわゆる派手目な戦闘シーンがすっかり影をひそめた(ちょっとだけあったけど)。やはり作者の執筆スタイルが変わったのかも。

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? (講談社タイガ)


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読了:静かな炎天, 若竹七海 [読書日記]

* 静かな炎天, 若竹七海, 文藝春秋, 9784167906740

女探偵・葉村晶シリーズである。
例によってタフで不運なハードボイルド小説なのであるが、本作はこれまでよりはえげつない状況は薄まっている感じがする。探偵もちゃんと歳を取るということなのか、確かに肉体的にきつそうな状況は多々あるようなのだが、これまでのようにやたらめったら痛めつけられたりといった描写はかなり低調。まぁ個人的にはその手の描写は読んでいて辛かっただけなのでよいのだが。なにせ前作まではとんでもない事故やら何やらに巻き込まれ(突っ込んで)いましたからね、この探偵。

本書には、連作の形の短編5作が収録されている。どれも葉村探偵が拠点を構える古書店が少しずつからむ。というより古書店の店長がむりやり絡んでくる。このあたりはミステリ本のうんちくが混じったりがなかなか楽しい。また、本作では葉村探偵のタフさの描写のあちこちで、東京近郊(といっても主に都内&都下のみ)の近郊電車であちこち引きずり回される、という趣向がある。個人的には路線網を頭にちょいと置いて読めて面白いのだが、このあたりの鉄道路線に不案内な読者だと面白みが半減するような気もした。

葉村シリーズを読み継いでいる人なら、読んでおいて良いのではと思うが、単独でこれだけ読むと、ドタバタ加減になんだかイライラするかもしれない。

# ところで「スリッポン」って何? 文脈からはいわゆるクロックスのことなのかなぁ(笑

静かな炎天 (文春文庫)


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読了:世界をつくった6つの革命の物語~新・人類進化史~ (How We Got to Now - Six Innovations that Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン [読書日記]

* 世界をつくった6つの革命の物語~新・人類進化史~ (How We Got to Now - Six Innovations that Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン, 大田直子, 朝日新聞出版, 9784023315303

人類の技術発展の経緯を多面的にとらえた科学史と人類史のあいのこのような著作である。
参考文献リストなどを見るとなかなかの労作のようで、データに偏りすぎることもなく、といって逸話のような話ばかりにもならないようにバランスして書かれている印象だ。

取り上げられている技術のうち、主題の点に限れば、技術についていろいろ学んだことのある読者ならば、ふんふん知っているよこれ、といえるような内容が多い。しかし本書はそういう観点にとどまらない。その技術がその時期に実用化できた背景、それは技術的な点であったり、社会的要請であったり、人々の意識の問題であったり、さまざまなのであるのだが、それと二人三脚のように技術が実用化されたのだ、といった分析に重点が置かれているようだ。著者も書いているが、概要だけ聞くとあたかも風が吹けば桶屋が・・・のようにも聞こえる話。しかしそのように主張するからには、ちゃんと著者はそれなりに史料や証拠を提示している。このあたりはなかなか緻密で好感。

おそらく本書は、多少なりとも技術をかじった者が読むと、さらさら読めるのに、深くて、ワクワクできて、そして面白い、と思えるのではないか。個人的には、本書であらためて認識した事柄も多かったこともあり、なかなか良いものを読めたなというのが読了しての感想だ。特にガラス工業の登場(に始まる多方面の技術の爆発的な進化)に関する、まったく僥倖のようなケイ素物性の話。光通信技術を少しやったことがある者は、石英光ファイバーとエルビウム添加ファイバー増幅器に関するまるで奇跡のような物性の話が脳裏に浮かぶに違いない。最後まで楽しめました。

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史


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