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読了:風ヶ丘五十円玉祭りの謎, 青崎有吾 [読書日記]

* 風ヶ丘五十円玉祭りの謎, 青崎有吾, 9784488443139

「裏染天馬」シリーズの第3弾という連作短編集である。青崎作品は初読。
この作品より以前に登場人物などに同じ設定を用いた長編2作が出ているのだが、実は未読である。この特異なタイトル(もちろん、「五十円玉二十枚の謎」を意識してのものだろう)が平積みになっていたのに惹かれて購入。

本シリーズの舞台は、神奈川県立の風ヶ丘高校(名前とか近隣の駅名とかから推測すると、某旧学区トップ高のあの高校ですね)とその周辺。登場人物もおのずと高校生が主体であり、探偵役の男子高校生:裏染天馬くんがかなり特異な印象、対比してヒロイン(?)の袴田柚乃がかなりいい味をだしていて、周囲の人物像も含めてなかなか面白い。というか、読んでいてゲラゲラ笑ってしまった。

登場人物たちの動きと会話だけでも十分楽しめる面白さなのだが(ここを強調しすぎると軽い小説と思われてしまうリスクあり?)、この著者は鮎川哲也賞をとっただけのことはあって、なかなかの書き手である。会話文に頼りすぎることなく、読みやすい流れるような文章構成、それでいて論理展開や状況説明は漏れなくしっかりと記述される。個人的には有栖川有栖のそれに近い印象を持った。

いやいや、これはなかなか楽しませてもらえました。長編未読の読者への配慮もされていたりして、気が利いている。「五十円玉・・・」は(もともと競作に参戦したわけではないので当たり前ですが)ちょっと結末にありゃりゃと思いましたが、そういう前提抜きであれば十分なクオリティ。長編も手に取ってみたくなってきました。

風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)


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読了:江神二郎の洞察, 有栖川有栖 [読書日記]

* 江神二郎の洞察, 有栖川有栖, 東京創元社, 9784488414078

有栖川有栖の「学生アリス」シリーズの短編集である。もう一方のミステリ作家のアリスシリーズは短編が多数発表されているが、学生アリスシリーズでは初短編集。収録作はアンソロジーなどで出版されているものも多い由だが、一編しか読んだことがなかったようだ。
(ちなみに、五十円玉・・・のあの短編が載ってないなと思ったら、文庫版あとがきで著者本人が述懐していた。)

このシリーズは既に長編が4編発表されており、収録されている短編は基本的にそれら長編の事件の合間にメンバーが遭遇した話ということになっている。なので、シリーズを読み通している読者は、ところどころであぁとかおぉとか思うという仕掛け。ちょっと面白い。それから、京都の地理や習慣にもう少し詳しければさらに楽しめるのだろうなぁと思えることもしばしば。このあたりは関東人の辛さか(google mapを眺めるしかない)。

また、これはほかの長編もそうだが、描かれている時代が昭和末期から平成へというころなので、現在の生活必需品であるアレが存在していない。話の流れがいろいろともどかしかったり、トリック自体がそれで成立したりしなかったりするところもあるわけだが、それはそういう時代なのだと思って読みましょうということである。前にどこかでも書いたが、物心ついたころからソレがある若い読者はこの世界に入り込むのが難しいとか思うかもしれず、それはそれで気の毒という気もしてしまう。そんなこと言ってもどうにもならないのですが。

収録作品:瑠璃荘事件、ハードロック・ラバーズ・オンリー、やけた線路の上の死体、桜川のオフィーリア、四分間では短すぎる、開かずの間の怪、二十世紀的誘拐、除夜を歩く、蕩尽に関する一考察


江神二郎の洞察 (創元推理文庫)


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読了:アメリカの食卓, 本間千枝子 [読書日記]

* アメリカの食卓, 本間千枝子, 文藝春秋, 4167364018

米国人の生活&文化の歴史についての論評というかエッセー。
いわゆる戦後の時代に米国留学~滞在を7年ほどした経験や、その後の研究をもとに米国ないしその一部地域における食と生活の文化について、歴史を紐解きながら解説を試みている、のだと思う。1982年に単行本刊行なので、メモなどをあるていど暖めたか書き溜めたかしたのを一冊にまとめたのがそのころ、という様子。

取り上げられる題材は極めて多岐にわたるが、著者の筆が走るのはNYC近郊をはじめとするアングロアメリカのあたりと、ミシシッピ沿いの旧フランス領の地域のあたりのよう。逆に西海岸の話は薄めで、カリフォルニアの片隅でチャイニーズマーケットに入り浸って食材を買いだしていた自分(1990年代の話です)とは温度差があるようだ。しかしこれも米国東西のカラーなのであろう。

見返しの著者紹介には「主婦」とあるが、なかなかどうして読ませる文章構成で、それなりの年月を経ていても読みやすいなと感じる。そして、そもそも著者は(かくいう自分も)食いしん坊なのであろう、話が食べ物のくだりになると俄然生き生きと面白くなってくる。まぁ、前振りとしてその地域やら都市の歴史的背景が記されているのはそれはそれで教養として楽しくて、例えば、近代化に突き進む時代の米国都市における衛生事情とブタにまつわる話など、先日読んだ『世界をつくった6つの革命の物語』(こちらは科学史的な切り口)にも取り上げられていて、こう繋がってくるのかと嘆息したり。

ひさしぶりにローストビーフを焼いてみたくなりましたね。

アメリカの食卓 (文春文庫 (364‐1))


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読了:青白く輝く月を見たか? (Did the Moon Shed a Pale Light?), 森博嗣 [読書日記]

* 青白く輝く月を見たか? (Did the Moon Shed a Pale Light?), 森博嗣, 講談社, 9784062940757

森博嗣のWシリーズ第6弾である。舞台はいうなれば、北極編、とでもいおうか。

前作(南アフリカ編)までは「ウォーカロン」の解釈が物語のかなりのウェイトを占めていたのだが、ずいぶんと雰囲気がちがう。本書の主題はA.I.、いまをときめく(笑)人工知能である。もちろん森ワールドでは、単に人工知能がすごいみたいな話はもう出尽くしているので、そういう展開ではない。ややネタバレになるのかもだが、これまで「人間」と「ロボット または 人工物」の差異とは何か、と問われていたあたりをさらに一歩踏み出した感じ。バイオテクノロジィ的なガジェットはほとんど出てこないのが、(自分がウェット系の技術分野には相対的に疎いからなのかもしれないが)臨場感を醸し出すような気もするし、しかし逆にA.I.の描かれ方が多少SF観点ではステレオタイプっぽいような気もして、ちょっとだけぶっとび感が緩んだような気もしてしまう。期待しているベクトルが間違っているのかもしれないが。

そういえば前作もだったが、いわゆる派手目な戦闘シーンがすっかり影をひそめた(ちょっとだけあったけど)。やはり作者の執筆スタイルが変わったのかも。

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? (講談社タイガ)


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読了:静かな炎天, 若竹七海 [読書日記]

* 静かな炎天, 若竹七海, 文藝春秋, 9784167906740

女探偵・葉村晶シリーズである。
例によってタフで不運なハードボイルド小説なのであるが、本作はこれまでよりはえげつない状況は薄まっている感じがする。探偵もちゃんと歳を取るということなのか、確かに肉体的にきつそうな状況は多々あるようなのだが、これまでのようにやたらめったら痛めつけられたりといった描写はかなり低調。まぁ個人的にはその手の描写は読んでいて辛かっただけなのでよいのだが。なにせ前作まではとんでもない事故やら何やらに巻き込まれ(突っ込んで)いましたからね、この探偵。

本書には、連作の形の短編5作が収録されている。どれも葉村探偵が拠点を構える古書店が少しずつからむ。というより古書店の店長がむりやり絡んでくる。このあたりはミステリ本のうんちくが混じったりがなかなか楽しい。また、本作では葉村探偵のタフさの描写のあちこちで、東京近郊(といっても主に都内&都下のみ)の近郊電車であちこち引きずり回される、という趣向がある。個人的には路線網を頭にちょいと置いて読めて面白いのだが、このあたりの鉄道路線に不案内な読者だと面白みが半減するような気もした。

葉村シリーズを読み継いでいる人なら、読んでおいて良いのではと思うが、単独でこれだけ読むと、ドタバタ加減になんだかイライラするかもしれない。

# ところで「スリッポン」って何? 文脈からはいわゆるクロックスのことなのかなぁ(笑

静かな炎天 (文春文庫)


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読了:世界をつくった6つの革命の物語~新・人類進化史~ (How We Got to Now - Six Innovations that Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン [読書日記]

* 世界をつくった6つの革命の物語~新・人類進化史~ (How We Got to Now - Six Innovations that Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン, 大田直子, 朝日新聞出版, 9784023315303

人類の技術発展の経緯を多面的にとらえた科学史と人類史のあいのこのような著作である。
参考文献リストなどを見るとなかなかの労作のようで、データに偏りすぎることもなく、といって逸話のような話ばかりにもならないようにバランスして書かれている印象だ。

取り上げられている技術のうち、主題の点に限れば、技術についていろいろ学んだことのある読者ならば、ふんふん知っているよこれ、といえるような内容が多い。しかし本書はそういう観点にとどまらない。その技術がその時期に実用化できた背景、それは技術的な点であったり、社会的要請であったり、人々の意識の問題であったり、さまざまなのであるのだが、それと二人三脚のように技術が実用化されたのだ、といった分析に重点が置かれているようだ。著者も書いているが、概要だけ聞くとあたかも風が吹けば桶屋が・・・のようにも聞こえる話。しかしそのように主張するからには、ちゃんと著者はそれなりに史料や証拠を提示している。このあたりはなかなか緻密で好感。

おそらく本書は、多少なりとも技術をかじった者が読むと、さらさら読めるのに、深くて、ワクワクできて、そして面白い、と思えるのではないか。個人的には、本書であらためて認識した事柄も多かったこともあり、なかなか良いものを読めたなというのが読了しての感想だ。特にガラス工業の登場(に始まる多方面の技術の爆発的な進化)に関する、まったく僥倖のようなケイ素物性の話。光通信技術を少しやったことがある者は、石英光ファイバーとエルビウム添加ファイバー増幅器に関するまるで奇跡のような物性の話が脳裏に浮かぶに違いない。最後まで楽しめました。

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史


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読了:すばらしい新世界〔新訳版〕 (Brave New World), オルダス・ハクスリー [読書日記]

* すばらしい新世界〔新訳版〕 (Brave New World), オルダス・ハクスリー, 大森望, 早川書房, 9784151200861

ディストピアSFの古典。1932年の著作である。
この世界では、全ての人間は生まれる前から管理され、選別され、条件付けされ、階級化されている。受精卵への干渉や睡眠学習やらにより、それぞれの階級の構成員は、だれもがその現状に満足し、それぞれが幸せであると感じている、そういう世界が舞台である。

帯紙で伊坂幸太郎も書いているが、とんでもない悪夢だといえる状態であるのだが、少々コメディタッチにも見える書きっぷりから、これがディストピアなのかユートピアなのか読みながら時々混乱する。(一部、なぜか変わり者であるバーナード君を除き)登場人物はみな楽しそうであるし、下層階級の者であっても社会に不満があるわけでもなく、別に暴動や犯罪も起きないのだ。「1984年」やら「華氏451度」やらとは一線を画しているような感じで読み進めてしまう。

ものがたりは後半、観光(?)のため「保護区」へと赴いたバーナード君がとんでもない偶然により「野人」に出会うところから急展開する。
すばらしい現代社会へと連れ出された「野人」を巡り、いろいろと騒動が起こるわけだが、ここで野人が体現している常識としての生き方、ものの考え方は、どれも現代の人間社会が持っているものに他ならない。ここへきて渦中の「野人」は面倒な体験をすることになり、そしてディストピアがディストピアたる部分が(読者にとって)浮き彫りにされていくのだ。個人的には最後の幕引き方法は少々気になったが、しかしディストピアもの古典の名作であることは間違いないでしょう。

すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)


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読了:「昔はよかった」病, パオロ・マッツァリーノ [読書日記]

* 「昔はよかった」病, パオロ・マッツァリーノ, 新潮社, 9784106106262

過去を美化する風潮への警句である。2015年の出版。
帯紙には「なぜ日本人は過去を美化するのか」とあるが、本文を読んでいくと、これは必ずしも日本人には限らない、ずっと過去からの人類の病のようなものということのようだ。どうやら孔子もそのように言っていたようです(笑。

「昔は安全だった」「絆と人情があった」「みな礼儀正しかった」なんていうのは単なる記憶誤りであって、史料や統計資料にあたってみれば逆の状況だったことが明確になる、というのが本書の主張。参考文献もそれなりにちゃんと引かれているようなので、この辺のロジックはたぶん信用して良さそうである。特に本書でボリュームを確保している治安、安全の話は興味深い。あたりまえですが、この種の統計情報は(観点が時代とともに変わったりはしても)基本的な情報として正式なものが残っているわけで、これはだいぶ当てにして良さそう。

若者の根性が足りないとか、社会的マナーの劣化とか、このあたりは先日読んだ「江戸しぐさ」ばりの話で笑えるところでもある。戦前の電車の乗り降りのマナーがひどいものだったという話などは、(本書では引用されていないが)寺田寅彦の随筆でも触れられていたりするので明白な事実なのだと思われます。

一方で本書は、記述自体のロジックがいまひとつ厳密でなく、少々面白おかしく書かれている印象をうける。このあたりが参考文献として利用したい場合に障害になりそうな感じがするのがちょっと残念。

「昔はよかった」病 (新潮新書)


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読了:役に立たない読書, 林望 [読書日記]

* 役に立たない読書, 林望, 集英社インターナショナル, 9784797680096

読書論である。
念のため、「若者にもっと本を読ませましょう」のような単純な話ではない。若い人に読書を勧めてもいるが、どちらかというと、生涯読書を楽しんでほしい、でも実務的な本に絞るのはどうか、という論調であろうか。
課題図書を与えて感想文を書かせる、といった取り組みは一刀両断。ビジネス書を読むのを止めはしないが、誰かが勧めたからで本当に自分で読みたいと思いましたか、とも問いかける。「自分が読みたい本を読む」「読書に貴賎なし」などなど。

たぶんに著者の独断によるものもとはといえ、なるほどと頷かされることも多数。本文に書かれているが、ここで紹介されている本の読み方がすべてではもちろん無く、それぞれの読み方があって当然。それぞれの読み方を許容すべきじゃないですか、というのもポイントのようだ。
なんだかんだいって、ビジネス書はそれはそれで役に立つと思うし、だからこそ自分もちょくちょく読んだりする。技術書解説書なんてのは実用の最たるものだ。(それも良く読むが。)そうはいっても一定の割合で文芸書を読みたくなって、どうにか時間を作って読んだりするわけだが、まぁそういう読み方もあってよいだろう、と思うことにしたい。

基本的に本書は、具体的にああすべしこうすべしといったことは勧めていない。こう考えるとこんな良いことがあるかもよ、こういう行動ならこんな世界が開けるかもよ、といった、なんというか導きか篝火か。いわゆるテクニック系のビジネス書を読みつけているといらいらするかもしれない。

なお、本書は中盤にだいぶ紙数を割いて古典(ここではいわゆる古文のこと)の楽しみについて書かれているのだが、個人的には正直このくだりは読み進むのに苦労した。著者も言っているように、学生時代に無味乾燥な古文授業を受けていたせいか、どうにも古文にはとっつけない。このあたりも人によるということか。

役に立たない読書 (インターナショナル新書)


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読了:ムカシ×ムカシ (REMINISCENCE), 森博嗣 [読書日記]

* ムカシ×ムカシ (REMINISCENCE), 森博嗣, 講談社, 9784062936040

森博嗣のXシリーズ第4弾である。

なにやらいわくありげな旧家が舞台、その屋敷の主人夫妻が殺されるという事件が起き、いつもの探偵事務所の面々が屋敷の遺品、そのほとんどは美術品ということなのだが、の整理業務を請け負って現場に出入りしているのだが・・・という導入。あれ?いつの間に美術品を扱うようになったのだ?という疑問はさらっと状況説明的な文章で流される(のだが、森作品で美術品といったらアレでしょう、アレ)。で、そのつもりで読んでいると、なるほどやっぱりという展開になっていくという、ファンサービス的なストーリーとして構成されているようだ。最後のシメがまさにそれ以外の何ものでもないという感じ。

全般に、それほど混みいった事情やら超絶トリックやらは出てこないので、会話文が多いこともあってすらすらと読み進められる。登場人物たちの面白おかしい行動やら会話をクスクス笑いながら楽しみましょうという作品です。逆にこれだけ単体で読んでも、ふーんそれで?、ということになりそうだ。

ムカシ×ムカシ REMINISCENCE (講談社文庫)


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