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読了:屋上の名探偵, 市川哲也 [読書日記]

* 屋上の名探偵, 市川哲也, 東京創元社, 9784488465117

鮎川哲也賞受賞作家の市川による連作短編集である。本作は、女子高校生探偵「蜜柑花子」が活躍する4編を収録。

受賞作品である「名探偵の証明」がなかなか面白そうということでチェックしていて(残念ながら未読である)、同じ作者の新機軸シリーズが出たというので読んでみたというところ。感想としては、うーんどうなんでしょうこれ。

タイトルもそうだが、帯紙の文句、裏表紙のアブストを読んで、てっきりこの名探偵さんは安楽椅子探偵なのだと思い込んで読み始めたのだが、別にそういうわけではないらしく、少々肩すかし。名探偵・蜜柑花子は、高校の校舎屋上でお弁当を食べながら事件のあらましを聞くや、自ら関係者の聞き込みに回る。そしてもっぱら論理的消去法に基づいて、最終的には犯人と目される人物を特定するのだが・・・という感じの話である。

ワトソン役の「おれ」や、他の登場人物の面々の言動が面白すぎるというところは案外楽しめるのだが、もっとも、ちょっといくらなんでも漫才ちっくだったり、ありえんでしょ度重なるこの怪しい設定、といったところはだいぶ読んでいて気にはなる。まぁ、学園ものミステリということで、そんなに細かいところに目くじら立てずに面白おかしく読めばよろしい、ということなのかも。(たぶん根本的な問題は、本作とどうやらつながっているらしい前作を読んでいないことな気がします。それはそれでどうなんでしょうという気もしますが。)

屋上の名探偵 (創元推理文庫)


読了:私たちは生きているのか? (Are We Under the Biofeedback?), 森博嗣 [読書日記]

* 私たちは生きているのか? (Are We Under the Biofeedback?), 森博嗣, 講談社, 9784062940610

森博嗣のWシリーズ第5弾。
今回の舞台は南アフリカである。なにやら謎めいた存在である「富の谷」なる地区に赴くいつもの面々。ちょっとしたドタバタを経て、やや原始的な移動手段でもって現地潜入を敢行。意外にすんなりと当該地区の責任者と面会できるのだが・・・というストーリ展開。

実はこのあたりからが先が本作のメインなのだが、ネタバレになるのでちょっと語るのが難しい。
前作までもそうだったのだが、Wシリーズはわれわれ人類が近い将来に選択するかもしれない未来を描いている。本作の目玉技術も、10年余り前にものすごく話題になった某・アクション映画の流れと言えなくもないが、突き詰めていけばありえない選択でもないのかもしれない。果たして我々はこの方向性を検討するのだろうか。

(ところでこのシリーズ、毎回それなりに派手な戦闘シーンが出てくるのだが、本作ではあんまりそういうところは描かれていない。作者の趣向が変わったのかもしれない。個人的には少々鼻白む気分だったので無くても良いのですが。)

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (講談社タイガ)


読了:理科系の作文技術, 木下是雄 [読書日記]

* 理科系の作文技術, 木下是雄, 中央公論新社, 9784121006240

タイトル通りの本である。
理科系の、と銘打っているが、これは小説とか詩のような情緒的な作文ではなく、誰かに論理的に物事を説明するための作文、という意味である。よって、必ずしもいわゆる文科系の人が読んでも役に立たないいうわけではない。例えば、経済学部や法学部の学生とか、経理部や調達部の人が何らかの調査や検討レポートを書くのならとても効果があると思う。

もっとも、本書の中で具体的な事例としてあげられている文章は、いわゆる理科系の、それも論文を書く体裁にのっとっているものが多いので、そういった内容を読みつけていない人には少々とっつきが悪いかもしれない。

ともあれ、誰かに何かをうまく伝えるために、そして正確に誤解なく伝えるために、本書で紹介されている文章構成方法は有効であろう(計算機関係の話が古いのは本質ではないので適宜読者が読み替えてしまえばOK)。もともと学生といった若い人に読んでもらいたいという本であるが、自戒を込めて、読みづらい分かりづらい間違って解釈されがちな文章を書かないために、本書は時々読み返してみるといいのかもしれない。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))


読了:メタ思考トレーニング, 細谷功 [読書日記]

* メタ思考トレーニング, 細谷功, PHP研究所, 9784569827735

上位概念で考えましょうという、ビジネス含めた思考法啓蒙本。
(半年ほど前に読んだ「会社の老化は止められない・・・」と同じ著者であることに読後に気付いた。うーん。)

帯紙の表紙 「問題: 信号機と特急の停車駅、共通点は?」 がなかなかにキャッチー。(元鉄道マニアには直ぐにわかりましたが。)
「はじめに」で上位概念の概略を解説、続けて概念を上位にあげるための色々な考え方が提示され、その具体的な話がサワリだけ提示されるという形式で章立てが進んでいく。項目としてはなかなか興味深いものが多い。「なぜ3回」なんていう耳慣れた話もふつうにでてくる。アナロジー化もふつうに提示される。などなど。

本書を読んでいて消化不良気味に思ったのが、それぞれの項目について演習例題が提示されており、これがなかなか面白い思考実験だったりするのだが、巻末にでも解答の一事例でもまとめてもらえれば書籍として完結した形になるのでは、というところ。そこをちゃんと考えなさいということなのだろうが、やや気持ち悪さが残った。

メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)


読了:かくして殺人へ (And So to Murder), カーター・ディクスン [読書日記]

* かくして殺人へ (And So to Murder), カーター・ディクスン, 白須清美, 東京創元社, 9784488118426

カーのH.M卿ものである。
舞台は第二次大戦下のイギリスはロンドン近郊、映画会社のスタジオに集まる面々にしのびよる黒い影、何度かの襲撃の末、ついに魔の手が目的を遂げたかに・・・という、なかなかサスペンスフルな雰囲気のミステリである。

まずもって舞台が映画スタジオで、おもな登場人物が映画監督であったり、脚本家、女優などというところで、なんだかハリウッド映画の原作(近作では"La La Land"とか)みたいな話なのかなぁと思ってしまった。
登場人物はおおむね冒頭に紹介され、そして続けざまに事件が勃発。これがかなり絞り込まれたクローズドサークル状態(いきなりここまで絞るのか!)。警察は当てにならず、登場人物たちは自ら謎を追うのだが・・・、と突然H.M卿登場、という読者の意表を突く展開が楽しい。

最後の最後でH.M.が指摘する錯誤(?)は、うーんこれはちょっとした見落としに近いような気もしますが、でもカーが特殊な叙述に頼ったわけでもなし、どちらかというと特異な舞台環境での速い展開に読んでいるほうがついていけてなかった、ということのような気がしたのでセーフなのでしょう。
そして事件は結末を迎え、めでたしめでたしとなる。オチも気が利いているが、それを読んでも、やっぱりこの作品は映画原作という感じがしてきます。カーにはそんなつもりはなかったのかもしれませんが。

かくして殺人へ (創元推理文庫)


読了:ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)), 大崎梢 [読書日記]

* ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)), 大崎梢, 東京創元社, 9784488487065

大崎梢の書店員探偵シリーズの第四弾。
現役の書店員である女流名探偵コンビが活躍する成風堂シリーズと、同著者の別シリーズとして展開されていた出版社営業マン「ひつじ」君シリーズとがついに合体!という構成。なかなか面白い趣向である。

冒頭、「書店大賞」なる(なんだか聞いたことある気がしますね。笑)年次の一大イベントにしのびよる暗雲が提示され、登場人物たちは問題を回避するためにそれぞれの立場で奮闘するのだが・・・といったストーリ。例によって大規模な犯罪やら血なまぐさい事件は起きないので、そのあたりは心配しなくてよい。

本作は、タイムリミットを切った事件設定になっているのもあって、ややサスペンス調。このあたりは著者も狙っているところのなのかもしれないが、そのせいか、個人的には、これまでの作品に比べてあまり落ち着いて読める感じがしなかった。それから、謎の解決に至るあれこれがだいぶ場当たり的というかご都合主義だったりするのが(しかたないところもあるが、特に結末近くで)読んでいてだいぶ気になって仕方なかったのが、全体としてマイナス印象。
一方で、もともとどちらのシリーズも、書店もしくは出版社の内情に通じた著者ならではの臨場感がウリであるところもあり、舞台裏的な描写の細かさは本作も同じ。自分は一介の読者であって業界関係者ではないので、あーあるある!のような感情移入はできないのだが、そのあたりが楽しく読み進めるスパイスなのは変わりないようではありました。

ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)) (創元推理文庫)


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