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読了:いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記), 西條奈加 [読書日記]

* いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記), 西條奈加, 東京創元社, 9784488430122

「お蔦さんの神楽坂」シリーズ第2弾である。西條作品はこれで2作目の読了。

前作の第1弾は、本作と登場人物はかぶるものの基本は短編集。そして提示される謎ものがたりは、おおむね「日常の謎」系統であった。今回もその流れだろうと思って読み始めて・・・期待を裏切られました。しかし読み終わってから思うに、良い意味で裏切られたのかなと。

短編集のつもりで読んでいたら第一章が完全にもう突き放した感じで終わってしまい、なんなんだこれはと思いながら取りつかれたように第二章、第三章、と読み進めてしまうという構成。描きようによってはかなり凄惨な様子になるあたりは、これが筆力なのかさらっと、しかし必要な情報は伝わってくる良く練られた文章。登場人物の気持ちがぽつぽつと書き込まれ、機微なところがひしひしと伝わって切ない感じも溜まっていく。

一時期の宮部みゆきばりのストーリー展開と詳細状況の書き込みの深さにちょっと驚きを禁じ得ないが、その中に(これも本シリーズの特徴であるが)きわめて旨そうなご飯の描写が入り込む。しかもこれが原則すべて自宅ご飯である。ポイントポイントでこれがあることで、厳しい状況の中でもなんとか登場人物が生きて、そして生活している感覚になるような気がするのである。終盤はかなりやりきれない状況解明が続くわけだが、最後の最後はいちおうの着地点を迎えるようになっているのは、著者の優しさなのだろうか。

いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)


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読了:外来種は本当に悪者か?~新しい野生~ (THE NEW WILD), フレッド・ピアス [読書日記]

* 外来種は本当に悪者か?~新しい野生~ (THE NEW WILD), フレッド・ピアス, 藤井留美, 草思社, 9784794222121

いわゆる「外来種」は必ずしも悪ではないのではないか?という論点を問うドキュメントもの。
自然保護活動家の人が読むとひっくり返るかもしれない。
「いわゆる」外来種が在来の種を駆逐し置き換えるのは自然の摂理であるという論である。

そもそも環境変化(人為的な変化か自然の変化かは問わず)により従来そこに住んでいた種が弱体化しているからこそ、他からやってきた(これも人為的かそうでないかを問わず)種が優勢になるのだ。もしくは、環境変化によって生き物の繁栄するフィールドとしてプアーな状態である場所に、そのような環境に適応可能な種が居つくのである。・・・と全編こんな調子。
人類が関与していない例として、例えば氷河期が終わってからこっちのグレートブリテン島における種の移り変わりは、それは地球の自然が勝手にやっていることだろうというのは納得がいく。

在来の種によってエコシステムは最適解に完結しているのでこれを変えるのは悪、という考えは人類の奢りなのでは?という問いかけは確かにその通りかもしれない。すべてのケースがそうであるとは言えない気もするが、しかし外来の種はすべて悪者であり人為的に駆逐されなければならない、というのはヒトの身勝手、もしくは罪滅ぼしのつもりの独善なのではという気もする。

そもそもヒトがその地に進出してきたこと自体が外来なのではないか。それに答えられるのはヒトが滅んだあとかも知れないがそれはそれで自然の摂理、ということだ。自然保護の話に限らず、視点を常識で固定化するなという本書の考え方は色々応用できるように思う。

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD


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読了:幻の屋敷~キャンピオン氏の事件簿2~ (Safe as Houses and other stories), マージェリー・アリンガム [読書日記]

* 幻の屋敷~キャンピオン氏の事件簿2~ (Safe as Houses and other stories), マージェリー・アリンガム, 猪俣美江子, 東京創元社, 9784488210052

巨匠・アリンガムの短編11篇を編んだオリジナル短編集。
本作は、アリンガムが描く探偵役・キャンピオン氏の人物像を楽しむミステリなのだと思う。

表題作でもある「幻の屋敷」。いったいこれはどうなるんだと先行きの読めない謎のお話なのだが、これをピシャリ、と一喝。めでたしめでたしの結末で、さらにクスッと笑わせるサービスも忘れない。
もの悲しい真実が暴かれる不可能犯罪ものであっても、結末にはウィットに富んだ一言。これが最後の雰囲気をがらりと変えてくれる。

短編ならではの楽しみともいえるが、このシリーズは結構安心して読んでいられる。クリスティでいえば、「トミーとタペンス」シリーズのような雰囲気をまとっているような気がする。(わかるだろうか?笑)

創元からは11月に第3集がでるらしいので、これも楽しみにしていたい。

幻の屋敷 (キャンピオン氏の事件簿2) (創元推理文庫)


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