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読了:メディア・バイアス, 松永和紀 [読書日記]

* メディア・バイアス, 松永和紀, 光文社, 9784334033989

TVや新聞などのメジャーなメディアが垂れ流す「健康情報」に関するメディアリテラシー啓蒙本。副題は「あやしい健康情報とニセ科学」。
2007年の著作である。第3回科学ジャーナリスト賞の受賞作。

冒頭のつかみ部は、某TV番組(その後うちきり処分)の「納豆ダイエット」ねつ造事件、同じく「白いんげんダイエット」健康被害事件などなど、少々センセーショナルな描写から始まる。続く章では、そもそも100% vs 0%にきれいに分けられる物事など無い、同じモノでも量が1000倍違えば効果がまったく異なる、といった科学の本質の話。さらに続く数章では、トクダネに走りやすいメディア自体の特性や、人間の認知能力の特性といった、社会科学や認知心理学の話が展開される。シメは「科学報道を見破る十ヶ条」。
気合の入った構成である。つかみ部はともかく、それ以降の論理展開はなかなか緻密で、かといって専門用語や深い概念に入り込みすぎることなく、平易に平易に説明しようという気持ちが強く感じられる書き方である。
構成から考えるに、恐らく著者が想定している対象読者は、メディアが流す健康情報がちょっとおかしいかも?と思いつつも何がおかしいのか自分で整理しきれていなかった人、というところだろうか。もともとメディアを盲信しているような人は本書を手に取ったりしないだろうから、そういう人へのベーシックな啓蒙は狙いではない。あくまで、おかしいかも?と思った時に、じゃあ何がおかしいのかを他人に説明することができる考え方、を啓蒙しようとしているという感じだ。各章で具体的な事例をあげつつも、各論に陥り過ぎることなく一般論も展開しているところは、この点て非常に好ましいと思った。

念のため公平を期すために、個人的にはいまひとつと感じた点も2点。
本書中には参考文献が明示されておらず、そのあたりは著者webを見てくれということのようなのだが、webはそれはそれでやるとしても、いちおう書籍で情報を閉じさせておかないと中長期的には役に立たない情報源になってしまう恐れがあるのではないか。検証不能な主張が意味をもたないのは、本書でも指摘しているところだ。
また、読み手にもよるのだろうが、平易に説明しようとしているためか文章がですます調、語りかけ口調になっていて、内容が軽く感じられて損な気がする。それもあってか、やや口語的な断定が多用されているのも、本書が何を検証しようとしているのかを考えるともう少し気をつけて抑えたほうがよかったのではという気もした。

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)


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読了:私の銀座, 「銀座百点」編集部 [読書日記]

* 私の銀座, 「銀座百点」編集部, 新潮社, 9784101361819

「銀座百点」なる雑誌に掲載されたエッセーを編んだアンソロジーである。

基本的に東京の銀座にまつわる軽妙なエッセーが多く収録されており、さらさら読める楽しいエッセー集になっている。
執筆陣が豪華なのも特徴(但し当然であるが、今となっては物故者も多数。それはそれで味があるともいうが)。

いわゆる作家に限っていないのもポイントか。向田邦子、有吉佐和子、北杜夫といった作家陣が文章がうまいのはそれはそれで楽しく読めるし、橋田壽賀子、戸田奈津子、藤子不二雄Aあたりもまぁ物書きと言えば物書き。そうではない面々がものしたものとして、個人的には、女優・水野真紀、淀川長治、立川談志の話が超面白い。談志のこれはさすが噺家の面目躍如といったところか。

うんちく話はほとんどといって出てこないので、別に銀座ツウでなくても楽しめるところはよくできている。
ツウぶったエッセーも交じってはいるが、まぁそういうのは書いている人が書いている人なので、一般人がそれに目くじらを立てるのもどうかという話でしょうね。

私の銀座 (新潮文庫)


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読了:さよならハートブレイク・レストラン, 松尾由美 [読書日記]

* さよならハートブレイク・レストラン, 松尾由美, 光文社, 9784334772857

松尾由美の短編連作ミステリシリーズ。
「ハートブレイク・レストラン」「ハートブレイク・レストランふたたび」に続く第三弾である。

例によって「ハルおばあちゃん」が現れるファミリーレストラン、そこに持ち込まれるいわゆる日常の謎、だいぶエキセントリックな脇役のみなさんが良い味をだしつつ、「謎」に対するいちおうの答えをだして皆が納得していく。本作では、松尾作品ならではの「設定の妙」ももちろんポイントではあるが、この際それはあまり主題という形ではなくなってきている気もする。

ちなみに「さよなら」と題している割には、最終話もシリーズものとして確実に終了するようなストーリー展開にはなっていないため、描きようによっては第四弾もできそうな終わらせ方。このあたりは賛否あるかもしれませんが、ライフワーク的に長い物語にしていくというのもありそうかもしれない。(それはそれで楽しみではある。どうなんでしょうね。)

さよならハートブレイク・レストラン (光文社文庫)


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読了:20億の針 (Needle), ハル・クレメント [読書日記]

* 20億の針 (Needle), ハル・クレメント, 鍛治靖子, 東京創元社, 9784488615062

1950年に書かれた古典SFである。
このたび新訳復刊となったもので、帯紙には、「様々な共生生命SFの原点となった歴史的傑作」などの文字が躍る。
クレメント作品を手に取るのは「重力への挑戦」以来の2作目。

異星から飛来したゼリー状生物たる「ハンター」は、同類の逃亡者を追うために人間に共生する。本書の前半1/3くらいは、この生命体が行う共生に関する説明と、共生状態の宿主たる「ボブ」君と「ハンター」とが意思の疎通をかわす方法を編み出し、互いの状況を理解し、協力関係を築いていく過程とが、もっぱら時系列で綴られる。そして二人(?)は、逃亡者がいるはずの島への移動を果たし、容疑者(?)を絞り込んでいくのだが、、、という話が後ろ半分という形だ。

個人的には、この前半のストーリーが魅力的である一方、後半はミステリ小説と冒険小説の要素を一部盛り込んだ形のまぁほどほどのSFなのではという印象を持った。未知の状況に遭遇した者(この場合は、地球人だけでなく、「ハンター」もその一人)が、そこにある課題を科学的背景を基にした創意や工夫をもって解決していく過程それ自体を読者は楽しむという、いわゆるハードSFのおもむきがここにはある。
それに比べると、後半のミステリ的ストーリーは、ミステリ小説だと思って読むとずいぶんとご都合主義だったりするのが目につき、このあたりはちょっといただけない。

有名な古典なので、一度は読んでおくべき作品であろう。
ただし、のめり込めるサイエンスフィクション作品としての過度な期待は禁物。なにせ1950年執筆なのだ。

20億の針【新訳版】 (創元SF文庫)


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読了:半島を出よ, 村上龍 [読書日記]

* 半島を出よ〈上〉, 村上龍, 幻冬舎, 9784344410008
* 半島を出よ〈下〉, 村上龍, 幻冬舎, 9784344410015

2005年発表のベストセラー小説。
ちょっとした縁があって、いまさらながら読了。

2011年4月、北朝鮮軍部の密命を受けた9名の特殊部隊兵士が福岡市内に潜入、人質をとったうえで事実上の制圧活動を開始し、どたばたとして有効な手立てを打てない日本政府を尻目にさらに援軍が到着し、、、という事件のてんまつを描く話。(当たり前だが、本書には東日本大震災(2011/3/11)は存在しない。)
冒頭に登場人物一覧が提示されるが、これは実質読み飛ばしてよいだろう(そもそも列挙されている人物が多すぎてリストに意味がない)。
物語の軸は3つ。北朝鮮視点で描かれる戦略と組織運営の話、東京の政府関係者を中心としたダメダメな政治行政の話、そして福岡市内に固まってひっそりと暮らしていた特異な経歴の若者グループの話。章ごとに視点が変わり、それぞれの立場でそれぞれの活動を行っている経緯がひたすら描かれる。全体に抑えめで事実を淡々とという文章ではあるが、北朝鮮の兵士視点は(うがった見方すぎるかもしれないが)やや読者(=日本人)におもねる表現が目について、ちょっとクスッと笑いつつも、「経済的に破たんしつつある日本」を舞台に据えた小説の割には、先進国ではない国の市民が日本の風物を目の当たりにして驚く様子、をこういう描き方で表現するのはどうかなぁ、と、読みすすめながらだいぶ気になった。

全体の傾向として、「経緯がひたすら描かれ」の物量がやたらと多く、会話文も地の文もセンテンス分けが少なくてびっちりと書き込まれているのが特徴のよう。この大量の情報の中に、こっそりと網の目のような伏線が仕込まれているのかとも思ったが、読み終えた結果としては、そこまで詳細記述を読み込まなくてもOKな大枠な伏線だけだったようだ。

個人的な感想としては、上巻でかなり徹底的に現状否定や世紀末クライシス的な描写をこれでもかと展開した割には、下巻の後半で描かれる起死回生な一発の話の展開がご都合主義の極みで、読んでいてだいぶ鼻白んだというところ。ところどころに丹念に書き込まれている両国の市民の生活にかかわる話は、社会的問題として確かに指摘すべき内容であるなど、なかなか読ませる内容になっていると思うだけに、この幕引き方法は残念な感じだ。

著者は、ミリタリーもののドンパチ大作を書きたくて、全体のストーリー展開を後付けで考えた、のではないかと邪推してしまった。いや本当に、本作の戦闘シーンもしくは武器・火器を扱うシーンの描写が異様に細かくて、ここまでいらないだろうということも再三。これと記述詳細度のレベルを合わせるために、社会的政治的な話も詳細化したのではという邪推であります。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)


半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)


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