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読了:魔法の色を知っているか? (What Color is the Magic?), 森博嗣 [読書日記]

* 魔法の色を知っているか? (What Color is the Magic?), 森博嗣, 講談社, 9784062940139

森博嗣のWシリーズ第二弾である。
今回の舞台は、第一弾の最後で予告されていた通り、チベットの某所で開催される国際カンファレンスの会場。
いきなり物々しい状況に陥ったりするが、無事にオープニングレセプションに参加したかと思うや・・・という感じで、前作よりパワーアップしたスパイアクション物語が展開されていく。

ドイツから来た超大物科学者との対話で謎が少し明らかになったり、今後の方向性的な話も多少展開される。
が、やはり本作のポイントは最後数ページの邂逅シーンなのでしょう。

おそらくだが、Wシリーズのメインの読者は、森博嗣をこれまで連綿と読み続けてきた枯れた読者。そう思えば、この展開は水戸黄門的ともいえる予定調和な内容なのだともいえる。ミステリではなく既にSFなので、話としてなんでもありになってきたような気もしますが、実際問題として○○年後には人類は本当にこんな状況になっているかも。そういう意味では、本作はジャンルとしては、ハードSFに分類されるのかもしれない。

魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? (講談社タイガ)


読了:菩提樹荘の殺人, 有栖川有栖 [読書日記]

* 菩提樹荘の殺人, 有栖川有栖, 文藝春秋, 9784167905255

作家アリスシリーズの短編集である。

全4作の冒頭は、未成年者による犯罪を取り扱った「アポロンのナイフ」。刃物を使った連続殺人に火村とアリスが取り組むのだが、これはなかなか重たい話だ。周到に引かれたトリックを看破する!というような胸をすく解決ではまったくない。本作は、現代社会のひずみに一石を投じているわけだが、有栖川自身がこの問題についてどう考えているのかはちょっと気になる。

個人的には表題作「菩提樹荘の殺人」がやはり秀逸と思う。
終盤、捜査会議での火村のたった一点の指摘。これが事件現場の解釈をひっくり返す。だれかそれまでに気が付けよという話もなくはないが、まぁこれくらいは許容範囲でしょう。

菩提樹荘の殺人 (文春文庫)


読了:彼女は一人で歩くのか? (Does She Walk Alone?), 森博嗣 [読書日記]

* 彼女は一人で歩くのか? (Does She Walk Alone?), 森博嗣, 講談社, 9784062940030

森博嗣のWシリーズ第一弾である。もうこれはミステリではなくSFと思ってよい。
「女王の・・・」シリーズ(これもほとんどSF)でだいぶ存在感を出していた「ウォーカロン」。こいつが主題ということで、最近はあまり新シリーズには手を出していなかったのだが、試しに買ってみたというところ。基本的にミステリとSFは、どちらも好みである。ミステリは本格、SFならハードだ。

本作品(本シリーズ?)では、ウォーカロンの概念がだいぶ進化(ですよね?)した形で現れる、というより、メインの存在として描写される。それも高々○○年後のことだ。純粋に技術的にここまで行くのはちょっと大変だろうという思いと、人類(特に非キリスト教圏)はこの分野に手を出すような気もするよなぁ、という思いが個人的には何回も交錯した。

ストーリー概要は、もう帯紙やらポップを読んでいただいたほうが早い。
他のシリーズとの関連性がどうこういうあたりは、本作を読んでいただくしかない。

いや、やっぱり人類はこの方向に絶対に手を出す気がしてきました。

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)


読了:火星の人〔新版〕 (The Martian), アンディ・ウィアー [読書日記]

* 火星の人〔新版〕(上) (The Martian), アンディ・ウィアー, 小野田和子, 早川書房, 9784150120436
* 火星の人〔新版〕(下) (The Martian), アンディ・ウィアー, 小野田和子, 早川書房, 9784150120443

米国SF、しかも映画作品原作である。
個人的にはこのカテゴリは敬遠してきたのだが、ついつい買ってしまった。

火星有人探査のクルーの一人が、緊急撤収時の事故で吹き飛ばされ、死んだと思われていたのだが実は生存していたという設定である。火星地表上に残された機材と物資と自らの化学・生物・工学知識、そして火星環境自体を使ってなんとか生き延びようとする戦いを描く。

本書のほとんどの分量は、取り残された植物学者かつエンジニアであるマーク・ワトニー飛行士のログ(日誌)の形をとる。ほぼ独白であり、誰かが読むことを期待していないログであるという設定もあって、ユーモアというか無茶な物言いがちょいちょい出てくる。きわめて口語調であるのと、直訳っぽいようでちゃんと雰囲気を伝える訳になっているところも良い感じ。特に理工学系にある程度通じている読者なら、読んでいてニヤッとすることがしばしばあるだろう。
ちゃくちゃくと生き延びるための計画を定量的に立て、突発的な事故(しかしそれは起こるべくして起きるたぐいのもので、空から隕石が落ちてくる的なものではない。作中でもそのあたりはちゃんと説明あり)や、検討見落としによるトラブルを乗り越え、多少の(かなりの?)僥倖にも恵まれながら、えぇ~というような方法で地球との連絡を確立し、、、といった流れでストーリーが進んでいく。

自分も含め擦れたSF読者だと、さてこのあたりで地球側で政治的駆け引きが始まるかも、とか、経済性がとか選挙民がみたいな話がでてくるころだよな、とか考えてしまうのだが、著者はそういう脇道にそれるのが嫌いなようだ。リアルさを求める読み手によっては物足りないと思うかもしれないが、個人的にはもうそういう話は現実世界でいやというほど付き合っているのでSFくらい気持ちよく技術の話を読ませてくれという気分だったりする。その意味ではたいへんすっきりした読後感で、ひさびさに良い時間をすごしたと思えたくらい。

ちなみに類似のテーマを扱った古典SFとして、ジョン・W・キャンベル・Jr, 「月は地獄だ!」 (1950) と対比するのも面白い。こちらは一人、あちらは15名。ヴェルヌとスウィフトみたいですネ。(笑)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)


火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)


読了:船から消えた男 (Man Overboard!), フリーマン・W・クロフツ [読書日記]

* 船から消えた男 (Man Overboard!), フリーマン・W・クロフツ, 中山善之, 東京創元社, 9784488106256

クロフツ中期のフレンチ警部もの。
事件の舞台は北アイルランドのベルファスト近郊である。アイリッシュ海をわたってリバプールへと運行されているフェリーから乗客の男が姿を消す。北アイルランドとイングランドにまたがる事件ということでスコットランドヤードにお呼びがかかり、フレンチは部下を伴ってリバプール経由でアイルランドへ、という流れで物語は進む。

メインの謎は、彼はなぜ、どうやって姿を消すことになったのか、に据えられている。登場人物はそれなりに多いのだが(特に各地の警察関係者)、おそらく意識的にステレオタイプ化が図られているので読んでいて混乱は少ない。
謎を解明するための警察の動きはしごくもっともだし、調査の穴が無いようにつぶしていく作業、並行して推し進められる推理にも飛躍や破たんはないので安心して読み進められる。

一方で、全編を通じて、ヒロイン的な役割であるパミラ・グレイ嬢の主観からの描写シーンが多めだ。これがだいぶ情緒的な雰囲気を作品に与えていると思う。特に中盤から後半にかけて、それなりの紙数もさかれている法廷シーンでは、彼女の感情の起伏の話がたっぷりと織り交ぜられていて、ちょっと読んでいてどうかなぁという感じではあった。

そして最後の最後に、ちょっとしたほころびを目ざとく捕まえるフレンチの眼力。そして追加調査の結果、ついに明らかになるトリック。あっと驚く大どんでん返し!というわけでもなかったが、中盤にひたすら繰り返されていたこの態度はそういう狙いでしたか的に、すべてのピースがぴたりとはまる感はたっぷり味わえる。

ちなみに個人的には、作中で語られる超絶化学成果にどう落としどころを付けるのかについても興味があったのだが、クロフツはそこをあまり重視していなかったようで結構そっけない。これはありゃりゃという感じであった。

船から消えた男 (創元推理文庫)


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