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読了:妖女のねむり, 泡坂妻夫 [読書日記]

* 妖女のねむり, 泡坂妻夫, 東京創元社, 9784488402204

泡坂妻夫の長編ミステリである。泡坂は短編ばかり読んできたので、長編は先日読んだ「湖底のまつり」に続いて2作目の読了。
カバー絵、タイトル、それに裏表紙の要約を読む限りでは、なんだか怪しげな幻想小説じゃないかと思えてしまうが、驚くなかれ実は・・・という代物である。

冒頭、ちょっとした偶然により興味深い書き物が見つかるところから物語は始まる。その謎を解くために(というより、掘り出し物で儲けようという思惑で)長野県へと向かう主人公。その列車内で第二の偶然の出会いが演出され、そして物語は輪廻転生にからめたかたちで本格的に転がり出すのである。

主人公たちはすべて即断即決で行動も早い。今でいえばジェットコースター的なミステリの様相。終盤に入ると、幻想小説はそのベールを脱ぎすてる。東京と長野を行ったり来たりしながら、都合数日間の物語は一気に完結してしまうのだ。

いろいろと偶然に依拠して話が進んでいくのが気に入らない向きもいるだろうが、これはあくまでも計画的犯罪小説ではないのでOKではないかと思う。ラストで冒頭のさりげない伏線にもどってくる(しかもその元の描写がまた・・・)ところなど、さすが泡坂という感じ。
当初はどうなることやらと思いながら読み進めたが、結局のところかなり楽しめました。

妖女のねむり (創元推理文庫)


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読了:シャーロック・ホームズの栄冠 (The Glories of Sherlock Holmes), ロナルド・A・ノックス/他 [読書日記]

* シャーロック・ホームズの栄冠 (The Glories of Sherlock Holmes), ロナルド・A・ノックス/他, 北原尚彦/編, 東京創元社, 9784488169077

いわゆる贋作ホームズもの、パロディ、パスティーシュのたぐいの作品を集めたアンソロジーである。
あらためて自分の書棚をみてみると、ドイルの作品も含めて「ホームズ」と名のつく書籍が30冊近く。ほとんどがこの種の作品もしくはアンソロジーである。そこに加わる1冊なのだが、本書の特徴はその執筆陣(といってもこの出版のために執筆したわけではもちろんないわけだが)。
ノックス(陸橋殺人事件!)から始まり、ベントリー、ミルン、などなど、そうそうたるメンバーが続く。

収録柵のなかには少々マニアが過ぎるのか、解釈に困惑するような作品もあったりするわけだが、それとは対照的にまるでドイルが書いたかのような体裁の作品もちらほら。かと思えば、モリアーティ教授がアメリカに登場してみたり、もう縦横無尽な感じ。ホームズものとは、それだけ後年のひとびとにアイデアを想起させるネタ帳みたいなものなのかも。

編者による巻末の解説、これがまたいろんな意味で面白い。このへんはシャーロッキアン病膏肓という感じなのでしょうか。いやはや。
たしか第2集もちかぢか刊行という話をどこかで読んだので、それも楽しみにしておきたい。

シャーロック・ホームズの栄冠 (創元推理文庫)


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読了:血か、死か、無か? (Is It Blood, Death or Null?), 森博嗣 [読書日記]

* 血か、死か、無か? (Is It Blood, Death or Null?), 森博嗣, 講談社, 9784062940993

森博嗣のWシリーズ第8弾。今回はエジプトが舞台になる。
帯紙に「人間を殺した最初の人工知能」とか「通信環境にない躯体はいかにした外界とつながったのか」とか、いくつか派手目な煽り言葉が並ぶ。

例によって謎のコンピュータがもろもろの事情により発見され、これを調査するためにエジプトに赴く面々。建築物にからむちょっと面白い描写が続き(このあたり森先生のお得意な分野であろう、あれ?犀川先生だったかな)、さらにWシリーズの前回作品までの話とのリンクが構成されていく。

しかし本作の眼目は第3章以降でしょうね。
(少々ネタばれに近い話になってしまうが、このシリーズは既にミステリではないので…。)
森博嗣作品群をずっと読みついできている読者は、固有名詞としての「メ○○○○」を目にしておやっと思うという仕掛け。さらにそれをアナグラム的にいじる。しばらく読み進めると、またもや「ミ○○」なんていう懐かしの固有名詞が出現。Wシリーズ特有のちょっとしたドンパチが続くのだがそれはおいておくとして、微弱な生体反応なんていう表現が出たら、もう2004年くらいに読んだアレのことに決まっています。

読み終えて・・・いやいやいやすごい話でした。
2年前、Wシリーズ第1弾に手を出していて良かった、と思えた瞬間でした。森マジックですね。

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

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読了:怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関, 法月綸太郎 [読書日記]

* 怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関, 法月綸太郎, 講談社, 9784062937504

法月の怪盗グリフィンシリーズ第2弾である。
本作単体で読んでも大丈夫だろうが、多少の予備知識があるとより楽しめるだろうから、前作「怪盗グリフィン 危機一髪」を先に読むといいかもしれない。
今回グリフィン氏が依頼される仕事は、とある奇矯なSF作家が残したとされる未発表原稿の入手。予備調査を始めると、同じものをなぜかCIAも狙っているらしい。SFの原稿にスパイ組織が興味を示すのは何故か・・・というところをちゃくちゃくと深堀りしていく、というストーリー展開である。

ちょっと気になるのは、中盤以降もおもしろがって読み進められるかどうかが、「量子計算機」にかかわる技術を多少なりとも耳にしたことがあるかどうか、にかかっている気がする点。個人的には、ちょこちょこ現れる固有名詞やら概念やらにクスクス笑いながら楽しんだのだが(「キャビット」には吹き出した)、これって一般的なのかどうなのか。

まぁそうはいっても前作同様、巧みな会話のやりとり(それは怪盗がその場しのぎ?でぽんぽんしゃべっている内容も含む)をはたで見て楽しむ、というのが本作の正しい楽しみ方な気もする。終盤まで読んだところで著者が仕掛けた全体像がわかるわけだが・・・、さてどうなんでしょうねこれ。

怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関 (講談社文庫)


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読了:名探偵の証明, 市川哲也 [読書日記]

* 名探偵の証明, 市川哲也, 東京創元社, 9784488465124

市川哲也の長編ミステリである。第23回鮎川哲也賞受賞作。
帯紙には、「若き名探偵×伝説の名探偵」などというポップが躍る。先日同じ作者の「屋上の名探偵」を読んで、本作が文庫化されたということで入手したもの。市川作品は2作目の読了である。

まず全体の感想ですが、いわゆるエンタメ的な感覚で本作を読むときっとがっかりするよな、というところ。探偵同士の熾烈な対決シーンがあるわけでもなく、とんでもない見立ての連続殺人事件が起きるというわけでもない。まして空前絶後のあっと驚くトリックが駆使されているということでもない。

あとがきでも一部触れられているが、本作の世界では「名探偵」がメジャーな存在として社会に受けいれられているという、ある意味でパラレルワールドなお話だ。それを踏まえて、「名探偵はいかにして存続するべきか」「名探偵は社会にとってどうあるべきか」のようなテーマを突き付けている作品、と受け止めるべきな気がする。もちろんストーリーを追っていけば、それなりの謎解きやらサイドストーリー、そしてどんでん返し的な趣向など、小説として純粋に楽しむこともできる。が、どちらかというと本作の狙いは、いわゆるミステリ小説の玄人な人たちに受けるであろうメタなお話、というところなのではないか。そこの点がもしかすると鮎川哲也賞としてあるべき姿だったのかもしれない。

有栖川の「探偵ソラ」シリーズにもちょっと通じるところがあるような感じもしますし、我こそはミステリマニア、というような人向け、か。

名探偵の証明 (創元推理文庫)


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読了:魔都, 久生十蘭 [読書日記]

* 魔都, 久生十蘭, 東京創元社, 9784488471118

1937年発表(戦前!)の探偵小説である。創元社が「没後60年記念出版」として文庫を出した。
久生十蘭作品は初読。帯紙には「日本探偵小説史に屹立する金字塔」なる文句が躍る。

文庫で500ページあまりとなかなかのよみごたえである。
冒頭からいきなり講談調で話が始まるので面食らうが、最後までこの調子は続く。ストーリーを追い始めて慣れてしまえばそれほど苦にはならなかった。それよりも、すらすら読むのに障害になるのは、戦前ゆえしかたないが、今となってなずいぶんと難しい漢語のたぐい。原則としてこの種の単語には漢字で本文がかかれ、それにルビが(意味が通じるように)ふってあるのでなんとか読み進められるようになっている。例えば、「係長は飽迄も謙遜り、」これを「係長はあくまでもへりくだり、」と読むのはなかなか骨が折れるはず。
ちょっと謎なのは、登場人物が会話文の中で外国語の単語をそのまま話しているらしい部分、例えば会話中で「甚だ辯明的だ。」なる部分に「はなはだイクスキューザブルだ」と読めるようにルビがふってある。最初の出版の時点でこのようにルビが付けてあったと考えないと意味が通じない。

本書は探偵小説に分類されているが、少なくとも今でいうミステリ小説ではなく、あたりまえだが江戸川乱歩以前、という立てつけである。読者が謎解きをしようという趣向ではなく、著者と登場人物が展開するものがたりに身をゆだねるのがよい。一方で本作品の読み物としての楽しみどころは、戦前の東京(と日本)の雰囲気や常識を、教科書や文献よりも肌感覚で知ったような気になれる、というところか。近代日本史はとてもとても弱いのですが、そんな自分が読者でもそれなりに読めたので、そういう目的にもよさそう。

魔都 (創元推理文庫)


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読了:しらみつぶしの時計, 法月綸太郎 [読書日記]

* しらみつぶしの時計, 法月綸太郎, 祥伝社, 9784396338114

非シリーズものを集めた短編集。1998年から2008年発表の作品が中心とのこと。

収録作品:
 使用中、ダブル・プレイ、素人芸、盗まれた手紙、イン・メモリアム、猫の巡礼、四色問題、幽霊をやとった女、しらみつぶしの時計、トゥ・オブ・アス

いくつかの作品は別のアンソロジーなどで読了済みなのはわかっていたのだが、未読の作品もあるので購入したもの。
感想は、、、作品間のギャップが大きくて右往左往した感じであります。
いわゆる異色作(「猫の巡礼」はその最右翼)が多くて、個人的には入れ込みにくいというのもあるが、本格的なパズラーかと思って読み進めていたらそうではなかったりとか、ちょっと合いませんでした。

その中でも「四色問題」は冒頭でいきなり吹き出した。巻末の本人解説にもあるが、これは都築道夫の「退職刑事」シリーズの贋作というやつですわ。すごく楽しい。四色といわれて森博嗣の某ミステリも思い出したがそれは関係なかった。

個人的興味からじっくり読みこんでしまったのは「盗まれた手紙」。途中まで読んだあたりで情報処理技術をやったことがある人はふと思うでしょう、これ何かの実用技術に似てないか?と。そう、ここで扱われているのは暗号理論でいうところの中間者攻撃そのものである。なんともマニアックなネタを下敷きにしたものだと感心するやらあきれるやら。

表題作「しらみつぶしの時計」もかなり強引な問題解法を手掛けているし(最後のびっくりポイントはおいておいても)、意外に著者はこのあたりの技術に通じているのかもしれないという気がしました。


しらみつぶしの時計 (祥伝社文庫)


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読了:世界を変えるデザイン―ものづくりには夢がある― (Design for the other 90%), シンシア・スミス [読書日記]

* 世界を変えるデザイン―ものづくりには夢がある― (Design for the other 90%), シンシア・スミス, 北村陽子, 英治出版, 9784862760586

発展途上国向けを念頭に置いた工業デザインの本である。2009年の翻訳、原書は2007年なのでおよそ10年前になる。
とあるところで本書の内容を引いた話を伺ったのに触発されての読了。

工業デザインに多少なりともかかわった人であれば、たぶん知っているプロダクト「One Laptop per Child」が表紙絵。本書ではこれをはじめとして、広義のデザインについての具体例が多数あげられているわけである。

もっとも、「デザイン」を、素敵な見栄えを実現するもの、という観点でとらえていると、いったいこの話はどこに行くのかと疑問に思うであろう。スケッチブック片手の話には全くとどまらない。本書は、いわゆる広義のデザインよりさらに広い範囲を取り扱う。具体的な形があるものはもちろん、それを取り巻く社会的な仕掛けづくりや、商業化(それはつまり永続的に普及させるための唯一の解)のための具体的な取り組みの紹介にまで至るのである。

これを面白いと思うかどうかは人によるだろう。工業技術や産業経営を根っこに持っている人は面白く読めることうけあいだ。なにより、紹介されている各種プロジェクトのうち、少なくとも本書執筆時点でいまひとつ軌道に乗っていないと思われる事例もちゃんと公平に取り扱っているところに好感が持てる。その先鋒は「Qドラム」。これも工業デザインをかじった人なら見たり聞いたりしたことがあるのではないか。発想が画期的とされながらも、本書の時点でもいまひとつ普及の道筋が見えない水運搬手段。これを失敗プロジェクトと切って捨てるのは簡単だが、今後の教訓をそこから引き出せるかどうか。

翻訳のせいかやや特徴的な言い回しが多く、ちょっとすらすら読むには苦しい感じがするのが残念。

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある


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読了:二壜の調味料 (The Little Tales of Smethers), ロード・ダンセイニ [読書日記]

* 二壜の調味料 (The Little Tales of Smethers), ロード・ダンセイニ, 小林晋, 早川書房, 9784151824012

乱歩評「奇妙な味」の代表例として高名な短編「二壜の調味料」をはじめとして、26編を収録した短編集。
店頭で平積みになっているのが目について購入。ダンセイニの作品は、「二壜の調味料」以外読んだことがないはず。

いきなり表題作で始まる冒頭の1/3程度は、リンリー探偵もの。「肉や塩味料理にかける調味料ナムヌモ」のセールスマンであるスメザーズ氏が語り手を務める。(もちろん、このナムヌモがが問題の二壜なわけだ。)リンリー探偵は安楽椅子探偵かと思っていたのだが、実はそうでもないというのは本書を読んで初めて知った。

リンリー探偵ものが終わっても、奇妙な味はそのまま続いていく。どうなることやらと思いながら読んでいくと、なんと最後までそうだった、と。なかなか楽しい読書体験でした。あえて好みの作品をあげるとすると、「演説」がなんとも面白いストーリー展開をみせる。もちろん英国の事情を知っている必要はあるが、そうきましたか!と膝を打つという話だ。

まあそうはいっても、かなりミステリマニアな人向けに本書は編まれているようにも思えますね。

二壜の調味料 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


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読了:現代暗号入門~いかにして秘密は守られるのか~, 神永正博 [読書日記]

* 現代暗号入門~いかにして秘密は守られるのか~, 神永正博, 講談社, 9784065020357

タイトル通り、暗号技術を平易に解説しようという新書版の書籍である。

情報処理関連の知識として、現代の暗号についてはある程度の予備知識があるのだが、本書の目次をみてちょっと驚いた。(そしてそのまま買ってしまった。)

第1章の共通鍵暗号から始まり、ハッシュ関数、RSA暗号、楕円曲線暗号と、現在の暗号の基本となる技術が羅列されてきたところで、第5章「サイドチャネルアタック」とくるのに瞠目。

第4章までは、これは数学で語れる暗号の理論の話。しかし第5章では、いきなり電子回路と集積デバイスの話になるのだ。ふつう、暗号技術の解説だといってなかなかこのネタを持ち出す人はいない。どういう狙いだろうと思って再度著者紹介を読んだところ、どうやら著者の神永氏はもともとその方面の専門家であるようなのだ。

そして通読してみると、やはりというべきか第5章がめっぽう面白い。技術的に多く解説されない分野であるという興味もあるが、なんというのでしょう、文章がとても生き生きしていて楽しそうなのである。この分野が本当に好きなんでしょうね。なんだか羨ましいような気分にさせられた読後感であった。



現代暗号入門 いかにして秘密は守られるのか (ブルーバックス)


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